| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-192 (Poster presentation)

三宅島の火山灰堆積地に侵入した遷移初期種と中大型ミミズの関係

*門倉由季(筑波大・生物資源),上條隆志(筑波大・生命環境),橋本啓史(名城大・農),金子信博(横浜国大・環境情報),菅原優(筑波大・生命環境)

三宅島は2000年に噴火し大量の火山灰を放出した。火山灰の堆積が厚い場所では植物体はほとんど残らず一次遷移に近い状態にある。このような過程において、植生の発達には遷移初期種の侵入とともに中大型ミミズのような土壌動物が土壌生成等に効果を与えると考えられる。またこのような中大型ミミズの個体数は、餌となる遷移初期種のリターの質に影響すると考えられる。本研究では三宅島の火山灰堆積地において遷移初期種であるハチジョウススキ、オオバヤシャブシと中大型ミミズの関係を、分布調査と安定同位体分析を用いて検討する。

遷移初期優占種と中大型ミミズの関係を明らかにするために、ハチジョウススキ草原、オオバヤシャブシ単木下、オオバヤシャブシ低木林においてミミズ、植物、リターの採集を行った。採集されたミミズおよび葉は、安定同位体分析により炭素窒素安定同位体比を算出した。

オオバヤシャブシとミミズの個体数に明瞭な関係が見られ、オオバヤシャブシ低木林になるほどミミズの個体数が増加した。またリター量はいずれの地点でもハチジョウススキの割合が多かった。安定同位体分析の結果、C3植物であるハチジョウススキとC4植物であるオオバヤシャブシではδ13Cの値が異なった。C3植物のオオバヤシャブシの値は-29.63~-28.78‰となり、C4植物のハチジョウススキの値は-12.24~-12.20‰の範囲だった。一方ミミズの値は、-24.18~-15.27‰の範囲であった。以上の結果から、ミミズは多量に存在するハチジョウススキのリターを摂食しているだけでなく、窒素固定種であるオオバヤシャブシの質の良いリターも摂食していると考えられる。


日本生態学会