| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-202 (Poster presentation)

ニジュウヤホシテントウの寄主範囲拡大:葉の新旧で適合性が異なる新規食草の利用が導く変化

*菊田尚吾 (北大・院理), 藤山直之 (北教大・旭川), Sih Kahono (LIPI), 片倉晴雄 (北大・院理)

食植性テントウムシのニジュウヤホシテントウHenosepilachna vigintioctopunctataはナス科植物を主な食草として利用しているが、東南アジアのいくつかの地域では、約200年前に南米より導入されたマメ科のCentrosema molle(以下、マメ)も利用している。これまでの飼育実験から、新規食草であるマメでは成葉よりも新葉の方がテントウの餌としての適合性が高いことが経験的に知られている。一方で、旧来の食草であるナス科植物ではそのような現象は認識されていない。両食草を対象に、飼育条件下での新旧の葉の好適さと野外での利用状況を調査したところ、マメでは成葉よりも新葉を成虫は非常に良く好んで摂食し、幼虫の成育も良好であった。さらに、野外におけるマメの利用も新葉に集中していた。一方で、ナス科植物では新旧の葉の間で明確な違いは認められなかった。以上のことから、新規食草のマメではナス科の食草に比べ好適な部位が限られており、野外ではその部位が選択的に利用されていることが明らかとなった。マメの新葉の成熟はテントウの発育よりも早いため、移動能力の低い幼虫期においてもマメの新葉への移動が生じていると考えられる。ナス科植物の利用では確認されなかったマメ上での幼虫の移動を更に検討するために、マメへの適応状況(新葉上での幼虫の発育能力)が異なるいくつかの地域集団を用い、幼虫の新旧の葉の選択行動を調査した。本発表では、両食草の新旧の葉の好適さと野外での利用状況に加え、マメへの適応と幼虫の葉の選択行動の変化について考察する。


日本生態学会