| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-228 (Poster presentation)

ハルリンドウの生育地環境評価からみた愛知県生態系ネットワークの現状と環境教育への利用法提案

*味岡ゆい(中部大・現教),長谷川友美,藤井一憲,南基泰(中部大・応生)

愛知県では2010年度より生物多様性条約第10回締約国会議で取り決められた愛知目標に向け、生態系保全・再生を目標とした生態系ネットワーク構築に取り組んでいる。しかし従来の生態系ネットワークは、生物種の生息地環境や種多様性に注目した評価であり、遺伝的多様性までを考慮した生物多様性の評価とはなっていない。また愛知県は県民や学校それぞれが生態系ネットワークを念頭に置いた自然との共生を求めているが、環境教育での具体的な利用方法の提案は行われていない。愛知県を含む周伊勢湾地域に固有の湿地環境に加え、水田、樹林地などの普遍的な里地里山環境に生育するハルリンドウに着目し、遺伝的多様性の高いコアエリアの抽出、生育地環境の把握から愛知県内での生態系ネットワークのハブやコリドーとなる地域を検討した。またこれらの結果を環境教育へ利用する方法についての提案を目指した。

周伊勢湾地域に生育するハルリンドウ65地点について遺伝的多様性を指標とした場合、愛知県内には東部丘陵・西三河、東三河、知多半島の少なくとも3つのコアエリアがあり、その中でも遺伝的多様性まで考慮した生態系ネットワークのハブは2つの遺伝的グループが確認された東部丘陵・西三河であると考えられた。そのため、この地域の堆積岩類もしくは深成岩上の落葉広葉樹林や植林地などの樹林地はコリドーとして重要な機能を有していると示唆された。東部丘陵・西三河は愛知県が仮想する生態系ネットワーク軸の分岐中間地であり、遺伝的流動の観点からも重要な地域であった。このことから、生態系ネットワークは遺伝的多様性まで考慮する必要があることを、遺伝的ネットワーク図を作製し、環境教育で啓発していく必要があると考えられた。


日本生態学会