| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-255 (Poster presentation)

宮城県金華山島産アズマモグラの消化管における寄生蠕虫相について

*石田寛明,横畑泰志(富山大・院・理工),土橋明晃(山形県立山形南高)

アズマモグラ(Mogera imaizumii)は東日本を中心に日本の多くの地域に生息し、その消化管内寄生蠕虫相は各地で調べられているが(Yokohata and Abe 1989;Yokohata et al. 1988、1989a、b;Yokohata and Sagara 1995;Koizumi et al.、2012など)、それらはすべて本州産の個体によるものだった。一方、宮城県金華山島は小規模な島嶼であり、そこに生息するアズマモグラは、本州のものとは隔離されている。本研究では金華山島で2005~2007年に捕獲したアズマモグラ40頭の腸管から実体顕微鏡下で寄生蠕虫を集めた。

腸管内部からは主に線虫種3種(旋尾線虫類のAscarops mogeraProtospirura pseudomuris、毛様線虫類でモグラ類に固有のTricholinstowia talpae;感染率はそれぞれ7.5%、95.0%、27.5%)および条虫(同、12.5%)、鉤頭虫(同、20.0%)各1種であった。線虫類の種数は本州産のモグラ類に較べて少なく、島嶼隔離の影響である可能性がある。また、大半の宿主個体の腸管漿膜(外側の膜)面に小結節が多数見られ、内部に微細な幼若線虫が確認された(感染率97.5%)。日本産モグラにおいてこのような鉤頭虫および幼若線虫の報告はみられない。幼若線虫は、BLAST検索(国立環境研究所 岡野 司氏による)に基づくと、偶蹄目によく寄生する糸状虫科(旋尾線虫類)の種に近かった。金華山島にはニホンジカ(Cervus nippon)が多数生息しているため、何らかの経路でアズマモグラに感染した可能性がある。


日本生態学会