| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-260 (Poster presentation)

印旛沼沿岸におけるクモ個体数と陸生・水生昆虫量の関係:オニビシの繁茂は陸上捕食者へのsubsidyに影響するか?

*高木俊,鏡味麻衣子(東邦大・理)

水生昆虫の成虫は陸域捕食者へのsubsidyとして陸上食物網に影響するが、その移入量や季節変動は、水域の環境変化に依存すると考えられる。水生植物は、水生昆虫の幼虫に餌や生息場所を提供するが、一年生植物の場合には繁茂と枯死による大きな季節変化が生じる。水生植物の有無は、水生昆虫の陸域への移入量とその変動を介して、陸域捕食者の動態にも影響すると予想されるが、この間接的影響についてはほとんど明らかになっていない。本研究では、千葉県印旛沼で繁茂する一年生浮葉植物オニビシに着目し、オニビシが水生昆虫を介して陸上捕食者に与える影響を明らかにするため、オニビシ群落および開放水域に隣接する植生上でのクモ個体数と昆虫量を比較した。

調査はオニビシ繁茂期(8・9月)と枯死期(10月)に、沿岸のヤナギ群落4箇所(オニビシ2・開放2)およびヨシ群落8箇所(オニビシ4・開放4)で行った。ヤナギ群落では、樹上のクモ個体数を見取り法により計数し、飛翔昆虫を粘着トラップにより採集した。ヨシ群落では、スイーピングにより葉上のクモと昆虫を採集した。また、月1回、船上から採泥器により水生昆虫幼虫を採集した。

水生昆虫(ユスリカ・ヌカカなど)の幼虫は繁茂期のオニビシ群落で少なかったが、沿岸の成虫はオニビシの有無によらず、オニビシ枯死期に多く見られた。一方、陸生飛翔昆虫はオニビシ枯死期で若干少なかった。また、オニビシ群落沿岸では、枯死期にオニビシ食者(ジュンサイハムシ・ヒシヨコバイ)の移入が見られた。クモ個体数は、水生昆虫と同様に枯死期に多く見られた。これらからオニビシの繁茂は、水生昆虫の幼虫の分布には影響しても、陸域への移入量や捕食者であるクモの個体数への影響は強くないと示唆された。


日本生態学会