| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-266 (Poster presentation)

東北地方太平洋沖地震後の岩礁潮間帯生物群集:地震前後のデータを用いた地盤沈下と津波の影響の評価

飯田光穂*, 岩崎藍子, 阪口勝行, 佐原良祐, 萩野友聡, 野田隆史. (北大院・環境)

東北地方太平洋沖地震は生物の数や分布に大きな影響を及ぼしたと考えられる。こうした地震の影響を正確に評価するためには同一地点における地震前後の生物の数と分布の長期観測データが必須であるがめったに得られない。本研究の目的はこれらのデータをもとに岩礁潮間帯生物の個体群への地震の影響と現状を正確に評価することである。

2003年から2010年の7月に三陸の5海岸のそれぞれ5岩礁の計25ヶ所に方形区を設置し、固着生物の被度と移動性ベントスの個体数を計測した。地震直後の2011年の7月には全方形区を上方に広げ地震前と同様の調査を行うと共に沈降幅を計測し、2012年7月にも同様の調査を行った。

地震前の分布潮位のピークが方形区内にある普通種(固着動物4種、海藻4種、移動性ベントス4種)を対象に地震前後の個体群サイズの変化を評価するために、地震前後で同一の潮位(平均潮位の上下50cmの範囲)(比較法1)と地震前後で同一の地点(地震前の方形区の範囲)(比較法2)で個体群サイズの地震前後の差を求め、この値を地震前の年変動(標準偏差)で標準化することで効果サイズを求めた。

その結果、地震前と直後を比較すると固着動物ではフジツボ類3種は比較法1,2の両方で増加し、ムラサキインコガイは激減した。海藻類では2種が比較法1,2の両方で減少し、残りの2種は比較法1で減少し2で増加した。移動性ベントスのうち1種は両方で減少し、3種は地震の影響はなかった。また地震直後とその一年後を比較すると、固着生物では直後に減少した種では比較法1で増加し2で減少したのに対し、直後に増加した種ではどちらの比較法でも減少した。移動性ベントスは減少するものや増加するなど様々であった。


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