| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-267 (Poster presentation)

Environmental factors affecting the distribution of web-spiders in a paddy field.

Fukushima, T. (Tamagawa Univ.)

水田生態系においてクモ類は特に個体群サイズが大きいことから,害虫防除要因として期待され,これまで様々な研究がなされてきた.その中で小林ら(1974)は,イネ害虫が大量発生する前に予めクモ類の個体数蜜度を高めておくことでクモ類からイネ害虫へのトップダウン効果を強く保っておくことが出来れば,より効率的な害虫防除が可能になるという可能性を指摘した.その実現のためにはクモ類の個体数密度を高めておく必要があるが,そのためにはまずクモ類がどのような要因に影響され分布しているのかについて明らかにする必要があると考えられる.しかし景観レベルでのそのような研究はある一方で局所レベルでの研究は少ない.

そこで本研究ではアシナガグモ類に着目し,クモ類の個体数がどのような環境要因に影響を受けるのかを明らかにすることを目的として解析を行った.調査は東京都町田市の谷戸にある9枚の水田において,アシナガグモ類の個体数及び水田内の水平分布の把握を直接観察により行い,また主要な環境要因の計測も行った.解析はアシナガグモ類の個体数を応答変数とし,誤差分布が負の二項分布に従うと仮定した一般化線形混合モデルを用いて行い,モデル選択はAICを用いて行った.

その結果「田植え時の重機の使用」,「水田の土壌水位」,「腐食性昆虫の個体数」を説明変数としたモデルがベストモデルとして選択され,それぞれ負,負,正の効果を表した.またクモ類の水田内の分布が多い場所での土壌水位は大凡浅いということが分かり,さらに土壌水位と腐食性昆虫の発生量には正の相関が見られた.

以上の調査結果を踏まえると,アシナガグモ類は土壌水位を,餌である腐食性昆虫量に代わる指標として利用しているのではないかと考えられた.


日本生態学会