| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-298 (Poster presentation)

北海道二十四河川におけるシロザケ遡上数の時系列解析

*大坪澄生,高田壮則,小泉逸郎(北大・環境)

シロザケ(Oncorhynchus keta)は日本において重要な漁業資源である。本種は河川で孵化後ベーリング海まで回遊し,産卵のため母川回帰する一方で,他の河川に迷い込む個体が存在することも知られている。したがって,本種の個体群構造は母川回帰と迷い込みによって決まっていると考えられる。一方,遺伝的解析からは,北海道にはオホーツク海,根室湾,太平洋東部,太平洋西部,日本海の5つの地域集団の存在が知られている。本種が重要な水産資源であるということを踏まえると,本種の遡上数が,これらの地域集団間及び地域集団内でどのような変動を示すかを知ることは本種の資源管理において重要であると考えられる。そこで本研究では,北海道24河川のシロザケ遡上数データを用いて,個体数変動の同調性から本種の個体群構造を明らかにすることを目的とした。

本研究では1868~1985年及び,2001~2010年におけるシロザケ遡上数のデータを用いて解析を行った。1868~1985年のデータにおいては,1970年以降の人工孵化放流事業による個体数増加の影響を取り除くために,直線近似によるトレンドの除去を行った。その後,地域集団内,地域集団間ごとに相関係数を算出した。また,全ての河川間の距離を算出し,河川間距離と同調性との関係を調べた。

解析の結果,1970年以前では地域集団間で個体数変動は同調しなかったが,1970年以降は地域間での個体数変動の同調性が確認された。また,距離と同調性の間ではほとんど相関が確認できなかった。これらのことから,人工孵化放流事業の影響により北海道におけるシロザケの個体群構造が変化したこと,また本種の個体数変動の同調性は遺伝的構造と関わりがない可能性が示唆された。


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