| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-320 (Poster presentation)

処女女王に対するワーカーの攻撃性 ー雄遺伝子の利己性が攻撃行動を生み出す?ー 

OIST 生態・進化学ユニット

中南米を原産地とし、現在世界中に分布を拡大しているコカミアリWasmannia auropunctataは、雌(新女王)と雄が、それぞれ母親と父親のゲノムのみを受け継いで生産され、完全不妊のワーカーは有性的に生産される。本研究では、幼若ホルモン類似体(メトプレン)を処女女王に経皮投与し、強制的に未受精卵生産を促した。その結果、産卵開始後まもなく、コロニー内のワーカーによる処女女王への攻撃が観察された。実験では様々な条件下で処女女王にメトプレンを投与し、ワーカーが、産卵を開始した処女女王だけを特異的に攻撃することを明らかにした。 

2011年から2012年にかけてワーカーの遺伝子発現量を解析した結果によると、父系遺伝子の方が母系遺伝子よりも強く発現していることが明らかになった。従って、産卵を開始した処女女王に対するワーカーの攻撃性は、父系・母系遺伝子の間にみられる発現量の偏りに起因しているのではないかと考えられる。今後は、ワーカーの遺伝子発現量を、メチレーション阻害剤により強制的に変化させ、産卵を行う処女女王に対するワーカーの攻撃性の変化を確かめる予定である。


日本生態学会