| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-348 (Poster presentation)

自生・植栽集団の遺伝構造からみたユキヤナギのマネジメント

*芦澤和也(明治大・研究知財),木村恵(森林総研),練春蘭(東大・ア生セ),倉本宣(明治大・農)

ユキヤナギ(Spiraea thunbergii Sieb.)は、河川の岩場に生育するバラ科の落葉低木であり、大阪府、岡山県、広島県などの数府県の地域版RDBに記載されている。一方で、本種は、庭木としてさまざまな地域、場所に植栽される植物であり、自生地の周辺に植栽される場合もある。生育地の保全が求められているが、遺伝子レベルでの多様性の保全や植栽のあり方については検討されていない。本研究では、国内に広く植栽されていながら、自生地は限られているという特徴をもつ本種の取扱いを検討するために、8座の核マイクロサテライトマーカーを用いて、本種の自生集団と植栽集団の遺伝構造を明らかにした。

東北地方から中国地方までの本州の19河川と徳島県の1河川の計20河川の岩場に生育する312個体、19都道府県で植栽、栽培されている60個体、および、栽培地域不明の流通個体10個体の遺伝子型を決定した。

ベイズ推定に基づくソフトウェアSTRUCTUREを用いて、遺伝構造を推定したところ、3つのクラスターが検出された。阿武隈川、鮫川、久慈川の自生集団は、クラスター1に、荒川、手取川、櫛田川、宮川、吉野川、犬上川、保津川、高梁川、錦川、園瀬川の自生集団は、クラスター2に、多摩川の自生集団は、クラスター3に分類された。植栽集団のうち、58個体がクラスター3に、10個体がクラスター2に分類された。残る2個体はクラスター2と3の割合が混在していた。自生地付近での植栽は距離を十分に離すなど、慎重に行う必要があるが、特に、クラスター1、2が優占する自生集団の近くでは、可能な限り植栽を避ける必要がある。また、ほとんどの自生集団は、集団間で遺伝的に分化しているため、自生集団間での移動も避けるべきである。


日本生態学会