| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-360 (Poster presentation)

里川(能登・熊木川流域)における魚類相:最近50年の変遷、現状

*寺島佑樹(金沢大,理工学域),堀内美緒(金沢大,地域連携推進センター),粟野秀,岩井紀美子(金沢大,環日本海域環境研究センター),中村浩二(金沢大),柳井清治(石川県立大学)

近年,能登の里山・里海が2011年に世界農業遺産に認定されるなど,里山・里海がもたらす生物多様性や生態系サービスが注目され,その保全への関心が高まっている。本研究の目的は里山・里海をつなぐ里川に生息する淡水魚類に影響を与える環境要因を現在と過去(1960年代以前:圃場整備前)を比較し明らかにすることで,復元のための目標となる河川環境を明らかにすることである。研究対象地として,石川県七尾市を流れる典型的里川の熊木川流域を選定した。調査区を熊木川本流とその支流4河川に合計15ヶ所設定し,各調査区において魚類調査(投網,電気ショッカー使用)と生息環境調査(計測項目:水温,水深,川幅,流速,河床構造,カバーの面積,カバーの水深)をおこなった。次にこれらの調査から得られたデータをもとに一般化線形モデルにより,淡水魚類の種数に影響を与えている生息環境要因を推定した。過去の生息状況と河川環境については,地元の高齢者(60歳以上)を対象とした聞き取り調査を実施し,魚類相の時間的変化とその要因について解析を行った。

この結果,魚類調査では,流域全体において計15種が確認された。応答変数を種数とする一般化線形モデルによる分析から,流速の変動幅とカバーの水深と小礫率いうモデルのAIC値が最小となった。聞き取り調査から,現在では1960年代以前と比較すると淵,河床の岩,河岸のカバーが消失しており,そのような環境を必要とするウナギ(Anguilla japonica),ナマズ(Silurus asotus)の減少が著しいということがわかった。これらのことから,流速を変化させるようなカバーのある瀬淵構造を作ることが多様な魚類相を確保する上で重要であると考えられる。


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