| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-361 (Poster presentation)

チョウセンキバナアツモリソウの保全遺伝学的研究

*九石太樹,陶山佳久(東北大院・農)

わが国では秋田県のごく一部に自生するチョウセンキバナアツモリソウCypripedium guttatum(以下本種)は、過去における過度の盗掘などにより著しく自生個体数が減少し、極めて希少な植物として絶滅危惧IA類に指定されている。秋田県の自生地以外には北海道大学植物園で現地外保存されており、海外では韓国、中国、ロシア、アラスカなどに自生する。本種は環境省の「国内希少野生動植物種」として保護増殖計画の対象種となっており、北大植物園で保存する株の現地への植戻しや増殖などが検討されている。本研究の目的は、現地外保存されている株と自生地の株、さらには海外の株との間の遺伝的な関係を明らかにし、適切な保護増殖計画のための基礎的な情報を蓄積することである。

調査対象サンプルは、秋田県の自生株、北大植物園の現地外保存株、およびアラスカの自生地から採取した株とした。これらのサンプルのDNA分析を行うことによって、秋田県の自生地のクローン数推定、遺伝的多様性評価、さらには各サンプル間の遺伝的関係の解析を行った。その結果、秋田県の自生地には、少なくとも複数クローンが自生することが明らかになった。また、北大植物園の現地外保存株と秋田県の自生地株との間には遺伝的に近縁な関係が認められ、これらの現地外保存株はもともと秋田県の自生地に由来する可能性が高いことが明らかになった。


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