| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-403 (Poster presentation)

伐採とシカの採食が薪炭二次林のリター分解過程に及ぼす影響

鈴木牧(東大新領域)*,伊藤江利子(森林総研北海道),三次充和(東大演習林),塚越剛史(東大演習林)

大型草食動物の密度増加によるリター分解過程への影響は草本植生においては顕著であり、植生の遷移段階により異なることが知られている。しかし、微生物相や土壌動物相の相互作用がより複雑な森林生態系においては、分解速度への影響の知見は確立されていない。本研究では、シカが林床植生に顕著な影響を及ぼしている二次林において、リター分解に対するシカの影響が植生の遷移段階によってどう異なるか検討した。

房総半島南部の常緑広葉樹二次林内に設置した、無処理・上層木伐採(伐採区)・防鹿柵設置(柵区)・上層木を伐採し柵を設置(両処理区)の、4通りの実験区で測定を行った。柵区と無処理区の植生に差はなく、両処理区では遷移初期樹種が優占し、伐採区では草本と低木が優占していた。現地で優占する常緑樹種と落葉樹種のリターを、それぞれリターバッグに詰めて林床に固定し,逐次回収して内容物の乾重とC/N比を測定した。バッグには土壌動物の侵入を許す4 mm 目と2 mm 目の二種類のメッシュサイズを使用し,メッシュサイズによる分解速度の違いを検討した。

常緑種リター、落葉種リターとも、乾重の減少とC/N比の増加は柵区と両処理区の方が無処理区より速く、シカの高密度化に伴いリター分解が減速することが示唆された。リターの乾重減少とC/N比の増加は伐採区で最も遅く、これはシカの影響でギャップ形成後の植被回復が妨げられ、地表面が乾燥がちだったためと考えられる。なお、バッグのメッシュサイズの大きさも乾重減少とC/N比の増加に度々正の影響を与えていたが、サンプルの物理的破砕は実験終期まで殆どみられなかった。したがって、大型動物の分解速度への影響は土壌動物を介した間接効果ではなく、微生物活性への直接的影響と考えられた。


日本生態学会