| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-434 (Poster presentation)

神奈川県におけるアライグマの定着状況によるタヌキへの影響

*岩下明生,西村貴裕,安藤元一,小川博(東京農大 野生動物)

外来種アライグマの侵入によって在来種タヌキがどのような影響を受けるか調べるため、アライグマの侵入時期が異なる神奈川県下の47調査地の緑地において、自動撮影調査によりアライグマとタヌキの相対密度を調べた。調査地をアライグマが侵入して10年以上を長期侵入地域(20調査地)、10年未満を新規侵入地域(14調査地)、まだ確認されていない地域を未侵入地域(13調査地)にそれぞれ区分した。自動撮影調査は1調査地につき自動撮影カメラを3地点以上設置し、1調査地200カメラ日以上の調査量を確保した。調査期間は2003年3月~2012年2月で、複数の季節にまたがるように調査した。 調査は全調査地で延べ23,416カメラ日の調査量だった。アライグマは長期侵入地域の95%、新規侵入地域の79%の調査地でそれぞれ確認できた。アライグマの撮影頻度は長期侵入地域で12.2回、新規侵入地域で2.8回、未侵入地域で0.0回となり、アライグマの侵入から期間が経過した地域ほど撮影頻度が有意に高くなった(p<0.01)。タヌキは長期と新規の侵入地域ではすべての調査地において確認できた。未侵入地域においては69%調査地でのみ確認できた。タヌキの撮影頻度は長期侵入地域で18.0回、新規侵入地域で21.6回、未侵入地域で2.9回となり、アライグマが侵入した地域の方が未侵入地域よりも有意に高かった(p<0.01)が、長期侵入地域と新規侵入地域ではタヌキの撮影頻度に有意な差はみられなかった(p=0.88)。アライグマが侵入してから10年以上が経過する地域においてもタヌキの相対密度は高いレベルにあることから、タヌキはアライグマによる競争による影響を受けていないと考えられた。


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