| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-441 (Poster presentation)

衰退ナギ林におけるナンキンハゼの侵入と開空率との関係

*前迫ゆり(大阪産大大学院・人間環境),稲田友弥(京大大学院・農・熱帯環境)

ナギ(Podocarpus nagi)は山口県小郡町が自生地北限であるが,奈良市春日大社境内御蓋山には700年代に献木された後,拡散したと考えられるナギ群落(天然記念物)が成立している。ナギはシカが採食しないために,春日山照葉樹林にも侵入している(Maesako et al., 2007)。しかし近年,御蓋山のナギは種子生産リズムが崩壊しており(塩見ほか,2008),ナギ林へのナンキンハゼ(外来種)の侵入が顕著である。本研究はナギ林の変化を約40年前の植生資料(菅沼・河合,1978)と比較検討するとともに,ナギ林の開空率と林分構造・種組成との関係性を明らかにすることを目的とした。

毎木調査,実生調査および開空率の測定は御蓋山5プロット,春日山原始林1プロットで行い,植物社会学的手法による植生調査は全26プロットで行った。季節変化をみるために,ナンキンハゼの展葉期(6月2日),生長期(8月2日),落葉期(11月28日)に開空率を測定した。開空率の測定はOpen-sky Reference Methods (Tani et al. 2011) により行い,画像解析ソフトGap Light Analyser ver. 2.02 (Frazer et al., 1999)を用いて算出した。

その結果,展葉期と生長期で大きな変化を示したのは,ナンキンハゼが材積比22.2%を占める御蓋山のナギ林で,開空率は展葉期13.4%,生長期8.4%,落葉期9.8%であった。一方,開空率の変化が小さかったのは,春日山原始林のナギ林(ナンキンハゼ0%)で,それぞれ3.5%,2.5%,3.1%と,1年を通して低い値を示した。ナギ林の出現種数は前者が32種,後者が9種で,開空率と種数との関係性が示唆されたが,シカの採食が種数の制限要因として働いていると考えられた。


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