| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-478 (Poster presentation)

CO2噴出地における土壌中の窒素動態

*上田実希(東北大・生命), 小野田雄介(京大・農), 神山千穂(統数研), 小嶋智巳(東北大・生命), 彦坂幸毅(東北大・生命)

大気中のCO2濃度は今世紀末には500~1000ppmまで上昇すると予想され、物質循環などの生態系プロセスへの影響が懸念されている。高CO2の影響を生態系レベルで把握するために、大規模なCO2噴出装置(FACE)が用いられてきた。FACE試験は長いものでは10年以上に渡っているが、数十年以上の長期的な生態系への影響を調べたものはない。本研究では、長期的な高CO2の生態系への影響を調べるために、天然CO2噴出地を対象とした。天然CO2噴出地の生態系は数十年以上に渡り高CO2に晒されている。しかし、多くのCO2噴出地では、対照区(通常のCO2濃度で他の条件が噴出地と同等)を設定するのが困難である。本研究を行ったCO2噴出地は、高CO2濃度のガス噴出区と、通常CO2濃度のガスが噴出する対照区が隣接する稀有なサイトである。本研究では、隣接する高CO2噴出地と対照区の土壌中の窒素(N)動態の比較を行い、次の二つの仮説を検証する。①高CO2区では植物は気孔を閉じ気味にして蒸散を抑えるため、土壌の水分含量が増大し、N無機化が促進される。このため、土壌中の無機Nの現存量が増大する。②高CO2区では植物やリターのCN比が大きくなり、植物や微生物によるNを巡る競争が激しくなる。N消費が増大し、土壌中の無機Nの現存量が減少する。

調査の結果、多くのFACE試験と同様に土壌水分は高CO2区で増加した。しかし、無機Nの現存量は減少した。土壌のN可給性の減少は生態系の一次生産を小さくする可能性がある。また、微生物に保持されるN量も高CO2区の方が少なくなっていた。これらの結果から、長期的に生態系が高CO2に晒された場合のN動態について考察する。


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