| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-480 (Poster presentation)

中国太湖における脂肪酸-炭素安定同位体比を用いた底生生態系の食物網解析

*藤林恵,野村宗弘,許暁光,相川良雄,西村修(東北大学大学院工学研究)

2012年8月に中国江蘇省にある富栄養湖沼である太湖において、巻貝Bellamya spと二枚貝Corbicula flumineaの同化餌源をバルク炭素安定同位体比および必須脂肪酸の炭素安定同位体比を用いて解析した。太湖北部から南部にかけて9地点で動物を採集したところ、8地点からBellamya sp、4地点からC. flumineaが採集され、そのうち3地点で共存していた。共存地点においては、いずれもC. flumineaが有意に低いバルク炭素安定同位体比を示しており、両者の炭素源が異なることが示唆された。Bellamya spは藍藻、C. flumineaは陸上植物のバルク炭素安定同位体比の値に近かったことから、それぞれ前者は内部生産、後者は陸上起源の有機物に依存している割合が大きいと考えられた。

またBellamya spのバルク炭素安定同位体比は採集地点間で有意に異なっていた。各地点においてBellamya spと餌源であると想定される底泥のバルク炭素安定同位体比間に有意な相関が見られなかったことから、Bellamya spは底泥の中から炭素源を選択的に摂食・同化していると考えられた。さらに、Bellamya spにおいて、必須脂肪酸であるリノール酸とリノレン酸の炭素安定同位体比を調べたところ、バルク炭素安定同位体比では有意差が検出されなかった地点間のBellamya spであっても、これら二つの必須脂肪酸の炭素安定同位体比では有意差を示す地点が確認された。今後、底泥に含まれる必須脂肪酸の炭素安定同位体比を分析することで、Bellamya spが底泥に含まれる有機物を選択的に摂食・同化しているのか検討する予定である。


日本生態学会