| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-490 (Poster presentation)

森林から沿岸までの河川流下過程にともなう栄養塩濃度の規定要因

*福島慶太郎(京大フィールド研), 鈴木伸弥, 福崎康司, 日高渉, 大槻あずさ, 池山祐司(京大院農), 上野正博, 徳地直子, 向昌宏, 吉岡崇仁(京大フィールド研)

河川生態系へのインパクトを最小限にする流域管理を考える上で,止水域や沿岸域の富栄養化をもたらす河川水中の栄養塩の空間分布や,各土地利用における供給源の把握が重要である。本研究では,栄養塩の一つである窒素に着目し,京都府北部由良川流域における森林から海までの河川および途中に存在するダム湖で,NO3-濃度とNO3-のNとOの同位体組成(δ15N, δ18O)を測定した。また,由良川流域のNO3-の空間分布と土地利用との関係の解明を目的とした。由良川流下過程で農耕地や市街地等の占有率が上昇するにつれて,河川NO3-濃度・δ15Nが上昇した。農耕地と市街地の面積比率とδ15Nとの解析から,農地からδ15Nの低い肥料が,市街地からδ15Nの高い下水由来のNO3-が河川に流入していることが示唆された。森林率の高い上流では土壌硝化由来のNO3-が優占的であった。また,森林流域ではδ18Oの高い降雨由来のNO3-の寄与が比較的多いことが示された。ダム湖内では夏季に放水口に近い中層付近でNO3-生成が,底層では貧酸素条件下での脱窒によるNO3-消費が見られ,夏季にはダム湖由来のNO3-がダムより下流の生態系に影響を及ぼすことが示唆された。沿岸への窒素負荷を把握する際に,ソースとして農地や市街地の他,ダム湖内の窒素動態も考慮する必要がある。


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