| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T06-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

間伐強度の違いが土壌細菌叢に与える影響     

*渡邊圭司 (埼玉環境セ・国立環境研究所), 渡邊未来, 林誠二(国立環境研究所), 多田千佳, 清和研二 (東北大 院農)

森林の持つ多面的機能を回復、維持させる目的で、間伐等促進法の施行や森林環境税の導入が行われ、全国各地で人工林の間伐が促進されている。しかしながら、人工林の多くは未だ間伐遅れで荒廃した状態が続いており、例えば関東近郊の森林では渓流水中の硝酸態窒素濃度が高く、窒素飽和の問題が顕在化している。一方で、適切な森林管理は(間伐等)、窒素飽和を改善する可能性を有することも報告されている。

森林土壌中の窒素動態には(例えば硝化や脱窒)、土壌細菌が深く関わっていることは周知の事実であるが、間伐が森林土壌細菌叢に与える影響およびそれに伴う土壌中の窒素動態の変化に関しては、極めて知見が少ない。森林土壌における細菌のDNAを対象とした菌叢解析では、一般的に気候区分の違いや地域差などによらず土壌細菌叢は比較的似た傾向を示す。言い換えれば、土壌細菌叢は環境パラメーターの影響を受け難く非常に安定している。それでは、間伐区および無間伐区のような下層植生や硝酸態窒素濃度が大きく異なる森林土壌においても、細菌叢は同じような組成を示すのであろうか?

本講演では、スギ人工林における間伐強度の違い(強間伐区および無間伐区)が土壌細菌叢に及ぼす影響をクローン解析により調べたので紹介し、間伐が森林生態系に与える影響について土壌微生物の視点で論じたい。


日本生態学会