| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T17-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

衛星データを用いた樹木群集組成指標値による生物多様性の広域モニタリング

田中厚志(京大農森林生態)

近年、REDD+や森林認証などに代表されるように、土地管理プロジェクトにおいて生物多様性に配慮が求められるようになった。これらのプロジェクトのように、対象地が国レベルあるいは伐採コンセッションレベルの広域な面積を有する場合、生物多様性についても、広域に渡りその時間変化を評価しなければならない。このような課題に対してはリモートセンシングによるモニタリングが有効であるが、生物多様性の広域評価方法はまだ確立されていない。共同研究者により、自然林からの商業伐採によって森林劣化が進行している東南アジアの熱帯降雨林において、樹木群集組成が森林劣化度と高い相関関係を持つことが明らかとなった。従って、樹木群集組成を生物多様性指標とし、それを衛星データによって評価できれば、生物多様性(の変化)は広域にモニタリング可能となる。国レベルの広域を対象とする際には、Landsatなどの中解像度の衛星データが有効と思われる。伐採による熱帯降雨林の劣化度は、一義的には、伐採対象となる極相種のバイオマス低下とパイオニア種の増加によって樹木群集組成に反映される。このため、樹木群集組成は地上部バイオマス、林冠の不均質性、林冠葉の活性などに反映されると考えられる。これらのパラメータと相関のあるデータを衛星画像から抽出し、生物多様性の広域評価を行った。まず、熱帯低地林の地上部バイオマスと相関の高いLandsatTMのband7を用いて森林劣化の程度を示す森林植生層化図を作成し、各層化クラスに多数の調査候補地点をランダム発生させることによって、様々な劣化度の森林に効果的に地上調査プロットを配置する方法を開発した。この地上調査から得られた樹木群集組成指標値と衛星画像から抽出したデータをモデル化することで、樹木群集組成を指標値とした生物多様性の広域評価方法を開発した。本講演ではこれらの結果を報告する。


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