| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-07 (Oral presentation)

絶滅危惧種・ケイマフリは日本国内に何羽生息しているか?

*先崎理之(北大・農院,北海道海鳥保全研究会), 長谷部真(北海道海鳥センター)

ケイマフリCepphus carboは、オホーツク海から日本海周辺に分布するウミスズメ類である。日本は本種の生息地の南限にあたり、本州北部と北海道の沿岸や離島の断崖に繁殖地が散見されるが、その生息数はこれまで大きく減少してきた。本種の保全には国内における詳しい生息状況を明らかにする必要があるが、ほとんど調べられていない。そこで、本研究は、国内における現在のケイマフリの生息状況を明らかにすることを目的とし、2011-2013年の夏季に北海道全域と青森県太平洋側の断崖のある海岸線と離島で本種の生息状況を調べた。また、これまで出版された文献や博物館に私蔵されている標本、各地の観察者からの聞き取り調査により、過去の生息状況についても調べた。

2011-2013年の国内におけるケイマフリの生息地は15ヶ所で、そのうち12ヶ所で繁殖を確認した。全生息地の合計生息数は1104羽であり、繁殖つがい数は少なくとも243つがいだった。生息地の規模別では、100羽以上の生息地が3ヶ所と少なく、50羽未満の生息地が9ヶ所だった。一方、文献と標本、聞き取り調査によって確認できた1875-2010年までのケイマフリ生息地は28か所で、このうち100羽以上の生息地は7ヶ所だった。

過去の生息地のうち、15の生息地では現在は生息しておらず、残りのほとんどの生息地でも個体数が減少していた。そのため、国内のほとんどの現存生息地も今後の消失が懸念される。本研究からはケイマフリ減少の原因ははっきりしなかったが、繁殖地の人為的撹乱(人間の立ち入り・開発)、採餌海域の人為的撹乱または餌不足、混獲等が考えられる。今後のケイマフリの保全には、現在の生息地の継続的なモニタリングに加え、本種の基礎生態(繁殖期の餌生物や採餌海域、越冬海域)を早急に明らかにする必要がある。


日本生態学会