| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-04 (Oral presentation)

土壌pHが河川堤防草地に生育する在来植物の発芽・生育に及ぼす影響

*羽田野真寛(東京大学),山田晋(東京大学),根本正之(東京大学),大黒俊哉(東京大学)

河川堤防は年2回の刈取りが継続的に行われ草地として維持されており、草原性の在来植物の重要な生育立地として位置づけられている。実際に河川堤防草地には草原性在来植物が多く生育する立地と外来草本植物が多く生育する立地が混在しており、それら植物種の棲み分けを決定する要因はほとんど解明されていない。一般に土壌pHが高い土壌は外来草本植物の生育に有利であるとされ、土壌pHは植生を決定する要因の1つである。

そこで、本研究では土壌pHを7.0、5.0、3.0に改変した土壌で、河川堤防草地に生育しているチガヤ、ススキ、ワレモコウ、ウツボグサ、ノアザミ、カントウヨメナ、カワラナデシコの発芽試験及び生育試験を行った。発芽率においては土壌pHの影響による差はウツボグサ、カントウヨメナ以外確認されなかった。生育試験においては、土壌pH7.0でチガヤ、カントウヨメナ、ノアザミの葉面積が大きな値を示し(p<0.05)、その他の種について有意な差は認められなかったものの、pH7.0で最大の葉面積となる傾向を示した。同様に地上バイオマスもpH7.0区で最大の値となった。この結果は土壌中の有効態リン酸、交換性苦土がpH7.0区で最大となったことが要因であると推察される。

本研究の結果、供試した草原性在来植物は土壌pH7.0区で最大の生長量を示したが、pH5.0区との差は僅かであった。既往の研究では土壌pHが5.0前後で外来草本植物の生育が著しく阻害されるとされている。このような土壌pHに対する生育量の差異が河川堤防草地における在来種と外来種の棲み分けを決定する要因の1つであることが示唆された。一方で土壌pHは土壌化学性を指標する値であるため具体的にどのイオンによって植生、生育に影響を与えるのかより詳細な研究が今後望まれる。


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