| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-06 (Oral presentation)

千曲川における植物群落の変遷と物理環境との対応

*片桐浩司,田頭直樹,傳田正利,萱場祐一(独)土木研究所・河川生態)

近年、礫床河川の低水路では、在来の丸石河原固有の植物群落が縮小・消滅し、シナダレスズメガヤなどの緑化用外来草本の侵入・拡大が報告されている。低水路の植物群落を扱ったこれまでの研究では、礫河原にみられる植物の生育にはその基盤条件が重要であることが示されている。このなかで、河原植物の生育には細粒土砂の堆積が負に影響し、逆にシナダレスズメガヤなどには正に影響することがわかっている。こうした基盤条件の変化の原因として、高度経済成長期に行われた大規模な川砂利採取による影響が指摘されている。これらは砂州をはじめとする低水路の広い範囲で行われてきたが、これまで河道縦断方向を対象にした研究は十分に行われておらず、砂利採取が河川構造や植生にいかなる影響を与えたかについてはわかっていない。

本研究では、礫床河川である千曲川を対象に、低水路の植生変化を引き起こした原因について、とくに砂利採取とそれに伴う基盤条件の変化に着目して検討した。その結果、河原植生の減少とその後の植生変化は、過去の砂利採取区間で集中的に起こったことがわかった。河原植生の大部分は、1998年の大規模出水によって消失したが、その後、同区間では再生することなく、オオアレチノギク、シナダレスズメガヤなどの外来草本やツルヨシの群落に置き換わっていた。この理由として、過去の砂利採取によって平均で約50cm厚の砂利が剥ぎ取られたことで、表層付近に細粒土砂層が露出し、外来草本に好適な基盤条件になったためと考えられた。このような外来草本と細粒土砂厚との対応関係は、現地の植生調査でも確認された。さらに河原固有の植物群落が失われることで、外来種被度の増加やβ多様性の低下などが引き起こされることが示唆された。


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