| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-12 (Oral presentation)

共進化的関係からみたウロコアリの顎形態の進化について

大河原恭祐,角倉なつみ(金沢大・自然・生物),兵藤不二夫(岡山大・異分野コア)

強い相互作用を持つ種間には共進化が生じ、それに特殊化した特徴が相互に発達しやすい。また個体群や地域によって選択の強さは異なるため、共進化のレベルや特殊化の度合いは個体群ごとに異なるモザイク構造となる。捕食・被食関係では捕食側には捕獲に特殊化した特徴が、被食者側にはそれを回避する特徴が相互に進化する。オオアゴアリ族のウロコアリStrumigenys lewisiは土壌節足動物のトビムシ類に専門食化しており、その捕獲のため細長く瞬発的に閉まる顎をもっている。この特殊な顎の機能や形態の進化は捕食対象となるトビムシ類の特徴に依存しており、西日本に分布するウロコアリ個体群の顎の長さは、その地域のトビムシ群集の体サイズに応じて変異していることが先行研究から示唆されている。本研究では新たに調査地を10地点追加し、さらに各地点に分布するトビムシ類の種類相と密度を調べ、顎形態との関係を詳細に調べた。その結果、先行研究と同様にトビムシ群集の体サイズの増加と伴に顎が長大化するウロコアリ個体群が4地点みられたが、その一方で6地点では顎が短縮化する傾向がみられた。そこでトビムシ各種の体サイズ、密度と顎形態の関係をより詳細に解析し、この変異の説明を試みた。トビムシ類は6-13種確認され、それらは体サイズによって小型、中型、大型の3つのグループに分類された。ウロコアリの顎の短縮化は小型トビムシ類とは明瞭な関係はなく、大型トビムシ類の密度や平均体サイズと負の回帰関係を示した。そのため、この顎の短縮化は大型トビムシ類の脚部や尾突起などの微細な部分を捕らえるためであることが示唆された。このようにトビムシ群集の体サイズによって顎形態にかかる選択には異なる方向性があると思われる。


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