| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-09 (Oral presentation)

遺伝解析と幼生分散モデルの統合によるクマノミ属魚類の幼生分散プロセスの解明

佐藤允昭(北大・環境),Lawrence P. C. Bernardo(東工大・情報環境),黒河内 寛之(東大・ア生),本多 健太郎(北大・北フィ),Klenthon O. Bolisay(フィリピン大・海洋),中村 洋平(高知大・黒潮圏),練 春蘭(東大・ア生),灘岡 和夫(東工大・情報環境),Miguel D. Fortes(フィリピン大,海洋), 仲岡 雅裕(北大・北フィ)

多くの海洋生物は幼生期間に産卵場所から分散し、定着後は新たな生息場で定住する。そのため、海洋生物の生息場間のつながりには幼生分散が大きく貢献していると考えられる。この幼生分散の量と程度については、(i)遺伝マーカーなどを用いた実証研究と(ii)海流を基とした幼生分散モデルによる理論研究により推定が行われてきた。(i)は幼生分散の結果を、(ii)は過程を明らかにすることができるが、同じ海域において両手法を統合した研究はほとんどない。そこで本研究ではサンゴ礁魚類を対象とし、両手法を比較することで、実際の幼生分散に対する海流の影響を明らかにすることを目的とした。

本研究ではフィリピン共和国プエルトガレラの半閉鎖性の湾内外において、そこに生息するクマノミ属魚類2種(ハマクマノミとハナビラクマノミ)を対象とした。野外調査では対象種の生息場(イソギンチャク)の位置を記録し、稚魚と親個体のサンプルを採集した。両種において開発したSSRマーカーを用いて、幼生分散を推定するために個体間の親子鑑定を行った。また、本海域において開発した幼生分散モデル上で親魚が存在する各生息場から幼生に見立てた粒子を放出し、幼生期間(8~10日間)後にどの地点に到達するかを推定した。

親子解析から、ハマクマノミでは3組、ハナビラクマノミでは1組の親子ペアが発見された。本発表ではこの結果と幼生分散モデルを比較し、幼生分散に対する海流の影響について議論したい。


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