| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-01 (Oral presentation)

フェノロジーの長期変化:多変量時系列モデルを用いた駆動要因の特定とその影響の定量

*深谷肇一(統数研), 高井孝太郎(東海大), 岩熊敏夫(函館工専)

近年、生物の活動開始のタイミングや気象に関する長期観測データを用いた研究から、地球温暖化が生物季節(フェノロジー)に及ぼしてきた影響の解明が試みられてきた。このような研究からは温暖化による気温上昇の影響を示唆するものが多く報告されてきた一方で、温度上昇から予想される生物季節の変化(例えば活動開始時期の早期化)とは逆のパターンを示すものも報告されている。このような結果のばらつきは、温度の上昇だけでなく温度以外の気象条件の変化、個体群動態、人為活動なども生物季節の決定に強く影響している可能性を示唆している。近年の生物季節の変化を理解するためには、様々な要因が生物の活動に及ぼす複合的な効果を明らかにすることが必要だろう。

本研究では、生物季節と気象変数および生物の活動に影響する可能性のあるその他の変数に関する時系列データを用いて、生物季節の長期変化のプロセスを明らかにするための統計モデルを提案する。モデルは変数のトレンドと変数同士の関係性を同時に推定する多変量時系列モデルである。発表ではこのモデルが生物季節の変化率に対する各変数の寄与の大きさをデータから定量できることを示す。また、このモデルを気象庁の生物季節観測データおよび気象観測データに適用し、ニホンアマガエルの初鳴き日の変化について解析した例を報告する。


日本生態学会