| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-03 (Oral presentation)

植生構造に着目した冷温帯ブナ成熟林における土壌呼吸とその空間変動

*西村貴皓(筑波大・生命環境),飯村康夫(岐阜大・流圏セ),井田秀行(信州大・教育),廣田充(筑波大・生命環境系)

成熟林の炭素収支が注目を集めている。それは,CO2の吸収源としての機能がないとされている成熟林が,実は依然として炭素を吸収している可能性が指摘されつつあるからである(Luyssaert et al. 2008)。この成熟林の炭素収支を明らかにするには,様々なCO2フラックスを正確に把握する必要があり,なかでも生態系からのCO2放出量の大部分を占める土壌呼吸の高精度な推定が不可欠である。しかし土壌呼吸は空間変動が大きいためCO2放出を正確に推定することは容易ではない。そこで私は土壌呼吸速度の空間変動とその要因を明らかにすることを目的とした。特に成熟林に特徴的な植生構造であるギャップ-モザイク構造との関連に着目して研究を行っている。

昨年までの長野県カヤノ平のブナ成熟林における調査で,一日あたりの土壌呼吸速度の空間変動が大きいことを明らかにしてきた(CV=0.34)。この結果は1haの調査区内に10 m間隔の格子状にチャンバーを121点設置して測定したものである。この土壌呼吸速度と林冠の閉鎖具合の関係を調べたところ負の相関が認められた。つまり,開けたギャップほど土壌呼吸速度が大きく林冠が閉鎖するにつれて小さいことを明らかにした。このような植生構造との関係が分かりつつあるが,これは前述のように10 m間隔で測定した土壌呼吸の結果を用いたものである。測定間隔によって土壌呼吸量の空間変動に関わる要因が異なるという報告もあることから (Kosugi et al. 2007),空間変動とその要因の把握には様々な間隔での土壌呼吸の測定が必要である。そこで本研究では10 m間隔の測定に加え,新たに5,2.5,1 m間隔で土壌呼吸を測定した。さらに土壌温度,水分量も測定を行った。発表では測定間隔毎に何が主要な要因か検討する。


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