| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-006 (Poster presentation)

インドネシアゲデ山における標高勾配に沿った系統的群集構造

*遠山弘法, 間瀬恵子

局所的な群集の種組成は、環境による制約と種間の競争排他のバランスで決定される。環境による制約は、生育環境に有利な形質を共有する種間の共存をもたらし、競争排他は資源をめぐる競争によって近縁種を群集から除くはたらきを持つ。近年、群集組成に種の系統情報を加えて解析し、生態的プロセス(競争排他、環境制約)と進化的プロセス(種分化、絶滅)がどのように交互作用し、群集内、群集間の種の分布を決めているのかを明らかにする研究が行われてきている。本研究では、この系統的群集構造解析という手法を用いて、局所的な群集の種組成における環境制約と種間の競争排他の相対的な重要性を明らかにすることを目的とした。一般に標高が高くなると、気温、水分、土壌などの環境制約が大きくなり種数が減少することが知られている。本研究では、植物群集に影響する最も重要な環境制約の1つである標高勾配に注目して研究を行った。調査地はインドネシアゲデ山で、標高勾配に沿った16地点で植生調査を行った。具体的には、1地点(100m×4m)に出てくる樹高4m以上の種、個体数をすべて記録した。分子系統樹はrbcLの配列を読み、ベイズ推定した。予想された通り、種多様性、系統的多様性は標高が高くなるとともに減少した。また、中標高下では群集は系統的に多様な分類群で構成されており、高標高下では系統的に偏った分類群で構成されていた。以上の結果は、中標高下では資源をめぐる近縁種間の競争排他が群集を形成するうえで重要であることを示唆する。また、高標高下では生育環境に有利な形質を共有するような近縁種が共存し、環境制約が群集を形成するうえで重要な要因であることを示唆する。


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