| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-018 (Poster presentation)

都市林・熱田神宮林における林床植生の種組成に影響する要因

*橋本啓史, 今川公揮, 都築芽伊(名城大・農), 長谷川泰洋(名大・エコトピア), 滝川正子(なごや生物多様性保全活動協議会)

名古屋市の市街地にある熱田神宮において、前回(1973年)総合調査時からの植生の変化を把握することを目的に2012年と2013年に毎木調査および植物社会学的植生調査を行った。

前回調査時の社叢は、主にタブノキ自然林とケヤキ自然林、ムクノキ群落、クスノキ人為林で構成されており、前年の台風で風倒孔のある林分や林縁種や路傍雑草が繁茂する植生が生じていた。しかし、今回の調査では多くの調査枠で下層植生が貧弱になっていたことから、特に草本層の種組成の約40年前からの変化を分析した。

前回19地点と今回17地点の植生調査結果の草本層のデータを一緒にDCAを用いて分析した。得られたDCA第1軸の得点は、北または東向き斜面の斜度とは正の、草本層の種数とは負のいずれも有意な相関があった。また種の第1軸の得点が高いものほど遷移後期の種であると考えられた。第2軸の得点は、いずれも有意ではなかったが、高木の胸高断面積合計と負の、亜高木の胸高断面積合計とは正の相関があった。また種の第2軸の得点が高いものほど乾燥した立地でも生育できる種であると考えられた。

同一地点(14地点)で約40年前と現在の第1軸の得点を比較すると、ほとんどの地点で上昇しており、遷移が進行して林縁種や路傍雑草が消えて種数が減少したと考えられたが、参道や園路沿いの人為管理が入る地点では逆の変化をした地点もあった。第2軸の得点は半数の地点で上昇し、大きく低下したのは1地点のみであった。前回調査では同じムクノキ群落クズ・ヤブガラシ下位単位に区分されていた地点でも草本層だけのDCAからは第2軸の得点が大きく異なる地点もあったが、現在は似たような草本層の種組成に収束していた。


日本生態学会