| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-028 (Poster presentation)

ボルネオ島の熱帯雨林における物質生産と樹木群集の動態に対する干ばつの長期的なインパクト

藤井新次郎(名大・地球水セ),佐藤永(名大院・環),熊谷朝臣(名大・地球水セ),中川弥智子(名大・農)

近年、世界各地でエルニーニョ・南方振動に起因する気候変動に伴う干ばつによる樹木の死亡が報告されている。東南アジアのボルネオ島に分布する低地熱帯林では、林冠において主要な構成分類群で地上部バイオマスの50%以上を占めるフタバガキ科の成長・枯死動態が、エルニーニョに起因する干ばつにより大きく変化していることが指摘されている。生物群集の中で重要な役割を果たしている特定の機能群の動態の変化は、熱帯林全体の構造や生態系機能に大きな影響を及ぼす可能性がある。熱帯域は強い太陽放射を受けるため、熱帯域の植生は炭素固定、水循環、さらには気候形成に対して強いフィードバック効果を持つ。また、熱帯林は地球の陸地面積の7-10%をカバーし陸上植生の40-50%の炭素を貯蔵しており、炭素を貯蔵する巨大な炭素シンクとして重要な生態系である。本研究では、個体ベースの植生動態を記述する生物地球化学シミュレータであるSEIB-DGVMを用いて、熱帯多雨林の物質生産や樹木群集の動態における干ばつのインパクトを予測した。モデルシミュレーションでは、全球気候モデルの気象値を植生動態モデルにインプットし、200年間の熱帯雨林の動態を記述した。また、降水パターン(降水頻度・降水量・季節性)を操作した干ばつ実験を行い、水ストレスが成長量や枯死量、リターフォール生産量に及ぼす影響を樹木のサイズクラスや機能群の違いに応じて分析した。


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