| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-049 (Poster presentation)

樹木のフラクタル性と枝サイズの統計性

小山耕平*, 山本健

対数正規分布やベキ分布は、複雑な現象で広く観察されている。本発表では樹木(北海道・十勝平野のハルニレUlmus davidiana var. japonica)における枝のサイズ分布に着目し、この2つの分布を考察した。

1本の大枝に着目すると、多数回の分枝を繰り返した構造になっており、根元側から先端側へ向かって分枝するにつれ枝は細くなる。

最初に全ての枝を分岐点において切断し、それらのサイズ(断面積)を計測してサイズ毎の頻度分布を調べた。枝の太さAと頻度Nの関係は負の指数をもつベキ関数であった。言い換えると、1/b倍細い枝の数がc倍の数だけ存在する(bとcは正の定数)、という関係がどのスケールでも成立していた。この関係は、樹木の自己相似性(フラクタル性)つまり「各分岐点を拡大すると同じに見えるから、各分岐点で平均して1/b倍細い枝c本に分岐している」から自然に導かれる。

次に分枝を繰り返した結果である最末端の枝(ここでは1年枝)のみについて、それらを全部集めた集団のサイズ分布を見ると、ほぼ対数正規分布になっていた。この関係は、やはり同様にフラクタル性により、それぞれの分岐点において枝が小さくなる縮小率の分布がスケールに依存しないこと(自己相似性)から、根元側から分岐を繰り返した結果である末端枝の太さをKolmogorovの連続破断課程と等価であると考えることによって説明できる。

以上から、1つのフラクタルな物体に対し、全体を構成する全てのパーツのサイズ分布はベキ分布になること、末端部分のみに着目した場合のサイズ分布は、対数正規分布になることが示された。


日本生態学会