| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-061 (Poster presentation)

異なる方法で伐採した林床に植栽された落葉広葉樹の個葉における光応答性

*田中 格(山梨県森林総研)

針葉樹人工林を針広混交林へ誘導する伐採方法ついて検討するための研究を実施している。本研究では,伐採方法の違いに対する個葉の光応答性を明らかにすることを目的とし,異なる方法により伐採された針葉樹人工林の林床に樹下植栽された落葉広葉樹の個葉における形態的特性および生理的特性を比較した。標高1300mの緩斜面に位置する約60年生のカラマツ人工林に25m×25mの群状伐採試験区,間伐試験区および無間伐試験区を設定した。各林床の相対照度を測定し,そこに植栽された落葉広葉樹9種(ケヤキ,ミズナラ,コナラ,クリ,ブナ,シラカンバ,ミズメ,ホオノキ,コブシ,トチノキ)において,個葉の形態として比葉面積(SLA),生理的特性としてクロロフィルa含有量の指標となるSPAD値および窒素含有量を測定した。ここで,窒素含有量は,比葉面積(SLA),SPAD値を測定した個葉を研究室に持ち帰りCNコーダーにより測定した。その結果,林床の相対照度は,瞬間値で,群状伐採試験区で約90%,間伐試験区で約30%,無間伐試験区で約15%であり,相対照度が小さくなるほど比葉面積(SLA)は大きくなる傾向を示し,SPAD値および窒素含有量は,大きくなるか,または、変化しない傾向を示した。すなわち,落葉広葉樹における葉の形態については,相対照度の低下に伴い個葉の厚さが薄くなるという従来から言われている傾向を示したが生理的特性であるクロロフィルaの含有量および窒素含有量については,相対照度の低下に伴い減少するという予想に反して,増加または横這いの傾向を示した。このことから,暗い光環境ではクロロフィルの能力および窒素利用効率が低下し,それを補うためクロロフィル量および窒素含有量を低下させない適応を行っている可能性が示唆された。


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