| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-065 (Poster presentation)

異なる土壌養分条件下に生育するアカマツの形態および通水特性

*三木直子,佐々木智志,楊霊麗(岡大院・環境生命),小笠真由美(東大院・新領域)

異なる施肥処理条件下(高濃度および低濃度処理区(H区、L区))で3年間育てた4年生のアカマツ実生苗を用いて実験を行った。個葉の面積と乾燥重量の測定と、個体あたりの各器官のバイオマス、着葉面積、地際直径、樹高について測定した。通水特性として仮道管の空洞化 (キャビテーション)に対する抵抗性の指標である水分通導度を50%失う時の木部の水ポテンシャル(Ψ50 )と、比木部断面積水分通導度(KS)を求めた。また日中の木部の水ポテンシャル(Ψx)も測定した。更に、通水機能を50%程度失うほどの乾燥を与えた後に乾燥解除のために再灌水を行い、約1か月にわたり葉の水ポテンシャルおよびガス交換速度を測定し,処理区間で比較した。染色による通水部位の判別も行った。

その結果、H区で樹高および地際直径が大きく、葉、幹・枝のバイオマスが大きい傾向があった。個葉の面積に差はなかったが、個体あたりの葉面積はH区で高かった。Ψ50やKS、日中のΨxに処理区間で差はなく、両処理区でΨ50はΨxよりも十分に低かった。一方、乾燥ストレス後に再灌水すると、H区は通水コンダクタンスやガス交換速度が回復する傾向がみられたのに対し、L区ではみられなかった。また、再灌水から約1か月後、H区のみ木部の内部に加えて形成層のすぐ内側の部位で通水機能が認められた。

以上より、H区では葉量の増加により蒸散要求性が高いが、日中のΨxに対してキャビテーション抵抗性が十分に高く、日常的な蒸散に伴う失水に対しては、通水効率などの増加を必要とせずに十分対応できていた。また、乾燥ストレス後のガス交換速度の回復は、新しい仮道管の形成の有無と関係している可能性が考えられた。


日本生態学会