| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-072 (Poster presentation)

CO2濃度の上昇と季節変化が常緑樹と落葉樹の光合成の温度依存性に与える影響

*山口大輔(東北大・生命), 高岡侑依子, 衣笠利彦(鳥取大・農), 彦坂幸毅(東北大・生命)

常緑樹葉と落葉樹葉では、光合成に関わる様々な生理的特性が異なる。また、落葉樹は秋になると葉を落とすが常緑樹は冬の間も葉を着けているため、温度変化に対して互いに異なる順化機能をもつ可能性がある。大気中のCO2濃度の上昇に対する葉のガス交換特性の変化が機能型間でどのように違うのかを解明することは、将来の陸域生態系の炭素収支を精度よく予測する上で重要な課題の一つである。本研究では、高CO2濃度処理と季節的な温度環境の変化によって、葉特性と温度-光合成関係がどのように変化するのかを生活史の異なる機能型を用いて調べた。

鳥取大学圃場のオープントップチャンバーで、常緑樹5種と落葉樹5種をそれぞれ通常CO2濃度 (390ppm)と高CO2濃度 (700ppm)下で生育した。2013年5~8月にかけてそれぞれの種についてガス交換測定を行った。

気温が大きく上昇した初夏から盛夏にかけて、常緑樹と落葉樹の光合成速度は、測定温度25℃では変化しなかったが、測定温度30℃では増加する傾向を示した。盛夏に高CO2濃度で生育した常緑樹は、通常CO2濃度で生育した常緑樹と比べて、より高温で光合成速度が高くなるように温度応答が変化した。一方で、高CO2濃度で生育した落葉樹ではそのような傾向は見られなかった。

常緑樹・落葉樹ともに初夏から盛夏にかけて高温での光合成速度が高くなるように温度応答は変化したが、盛夏の高CO2環境が温度-光合成応答に与える影響は機能型間で異なっていた。今回の結果は、環境変動によって常緑樹葉は現在よりも効率よくCO2を獲得できる可能性を示唆している。


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