| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-111 (Poster presentation)

ツリガネニンジンの送粉生態:夜の送粉者への適応

*船本大智(筑波大・生物),大橋一晴(筑波大・生命環境)

キキョウ科ツリガネニンジン属のツリガネニンジンは青色で下向きの釣鐘形の花を咲かせる。このような花形質は一般的にはハナバチ媒花の特徴である。しかしながら、ツリガネニンジンには昼間の送粉者はほとんど訪花しない一方、夜間に蛾が訪花することが観察されている(池ノ上 2010)。このようにツリガネニンジンでは、花形質とそれから推測される送粉者に矛盾が見られる。このような矛盾を解決するためには、開花時間や蜜の分泌時間などのこれまでわかっていなかった花形質を調べるとともに、送粉者相をより詳しく調べることが有効である。

そこで本研究ではツリガネニンジンの送粉者相と花形質(開花時間、蜜の分泌時間、雄性期から雌性期へ変化する時間、花の寿命)を調べた。調査は筑波大学の敷地内で行った。まず、花に袋がけをして花蜜の分泌量を4時間ごとに計測した。つぎに、開花時間と雄性期から雌性期へ変化する時間を1時間ごとに調べ、花の寿命を4時間ごとに調べた。さらに、送粉者相を調べるために、送粉者の種類ごとの訪問頻度を調べた。

その結果、送粉者については夜間に訪花する蛾が最も多かった。また、開花が16:00〜0:00に起こり、開花の翌日の16:00〜0:00に雄性期から雌性期への変化がおきた。また、蜜分泌も夜間、特に0:00をピークに行われていた。さらに、花の寿命は平均4.3日だった。

開花と雄性期から雌性期への変化、蜜分泌が夜間に起きることは、夜間の送粉に対する適応の可能性を示唆する。このことから、ツリガネニンジンは花色や花形態から予測されるハナバチ媒花ではなく、夜間に訪花する蛾に適応した形質を持っている蛾媒花であるといえる。


日本生態学会