| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-131 (Poster presentation)

となり、いいですか?〜マルハナバチのアザミ訪花における先客の有無・花鮮度・採餌時間帯の影響〜

柿添翔太郎, 崎田愛音, 重富健太, *川口利奈(九大・理・生物)

採餌個体にとって、餌場で自分より先に採餌している先客は、餌の存在を示す手がかりにも餌をめぐる競争者にもなる。たとえば訪花昆虫のマルハナバチは、見慣れない花種に出遭うと先客のいる花や花序に誘引されるが、通い慣れた花種を訪れる際には先客を避ける。ただし、老化や動物の採餌によって通い慣れた花種の報酬が枯渇した状況下で採餌している先客の存在は、再び報酬の残存を示す手がかりになるかもしれない。そこで我々は、マルハナバチの先客に対する反応が花の鮮度や報酬の枯渇によって変化するかを野外実験で検証した。

まずツクシアザミ野外集団から鮮度の異なる頭花(新・古)を採取し、それぞれにトラマルハナバチの死体をつけたものとつけていないもの(先客あり・なし)を用意した。この頭花をアザミ訪花中の同種に差し出し、着地しようとするか着地せずに去るかを調べた。蜜の枯渇度合いが異なると予想される午前・午後両時間帯に実験をおこない、ハチの反応を比較した。

その結果、午前の試行では、花の鮮度にかかわらず先客ありの頭花への着地率が先客なしにくらべ低かった。一方午後の試行では、新しい頭花を使った場合は先客ありへの着地率が先客なしにくらべ低かったが、古い頭花を使った場合は両者のあいだに着地率の差はなかった。午後のアザミ集団においては、ハチの訪問が頻繁な新しい頭花で均一的に蜜が枯渇しているのに対し、ハチの訪問が非常に少ない古い頭花の中に蜜の溜まったものが稀に混在する可能性がある。その結果、先客の存在を残存する蜜の手がかりとして利用する個体が現れたのかもしれない。本研究によって、採餌個体の先客に対する反応は餌資源分布の時間的変化によっても調整されることが示唆された。


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