| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-160 (Poster presentation)

種数-面積関係と密度-面積関係を同時に扱う階層群集モデル

*山浦悠一(北大・農), JA Royle(USGS), EF Connor(San Francisco State Univ), 伊東捷夫(伊東応用植物研), 佐藤清(伊東応用植物研), 滝久智(森林総研・昆虫), 三島啓雄(北大・サステナ学)

種数-面積の関係(SAR)は、生態学で最も重要なパターンの一つである。これまでのSARを扱うモデルは、群集構成種の密度は面積に対して独立であると仮定してきた。しかし、分断化景観では、個体群密度は面積に依存しうる。そこで本研究では、密度-面積(DAR)とSARの関係を、シミュレーション実験と野外調査によって検討した。野外では、面積が異なる若齢人工林パッチ(1.3-10 ha)でハナバチ、鳥類、植物を調査した。このデータに、密度の面積依存性と不完全な発見率、そして調査面積の不完全性(パッチすべてを調査しないこと)を許容した階層群集モデルを適用した。鳥類は遷移初期種のみを扱った。

シミュレーション実験の結果、DARはSARの形状に影響した。小面積選好性はSARを浅くし、極端なケースでは、SARを一山形にした。

野外データの解析の結果、面積選好性を示す鳥種はおらず、鳥類群集の密度はパッチ面積とは関係がないことが示された。植物の遷移初期種と外来種は面積選好性を示さなかったが、成熟林種はグループとしてわずかに小面積選好性を示した。これは、成熟林種のSARはDARによって浅くなっていることを示唆する。植物の成熟林種以外では、SARは面積選好性とは独立である(サンプリング仮説)と推定された。植物群集の解析から、パッチに生息する種の半数しか調査で発見していないと推測された。

個体群密度はパッチ面積を含む多様な要因に影響を受け、パッチ内に生息する全個体を数え上げるのは難しい。今回開発した階層群集モデルは、分断化景観で群集構成種の群集パターンに対する貢献の理解と予測に役立つだろう。


日本生態学会