| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-191 (Poster presentation)

西中国山地の山頂部に遺存する草原の種組成

*佐久間智子(広島大・院・国際協力),白川勝信(高原の自然館),中越信和(広島大・院・国際協力)

西中国山地では、たたら製鉄により森林が利用されるとともに、運搬に使う牛馬を養うために採草地や放牧地として山々が利用されてきた。産業の変化や農業への機械導入によって草の利用がなくなるにつれ、草原の管理もされなくなり、今日では大部分の草原で遷移が進行している。かつて草原として利用された山は、現在では山頂部にのみ草丈の低い草原が残っている。西中国山地において、山全体が草原として管理されている場所は少なく、今後の草原保全活動において遷移の状況を把握することが重要である。本研究では、管理の異なる山頂部に遺存する草原の種組成を把握し、草原としての管理・利用の有無による種組成の違いを明らかにすることを目的とした。

調査地は広島県北西部に位置する8箇所の山の山頂部とした。調査地の標高は880mから1223.4mであり、冷温帯に位置する。8箇所のうち、7箇所は過去に草原として利用された履歴があり、他の1箇所は200年生以上のブナが見られる原生林で、草原としての利用は無かったと考えられる。

調査は、「山頂と隣接し、山頂との標高差が10mを越えない範囲」を山頂部として定義し、山頂部に生育する、すべての維管束植物を記録した。

現在も火入れにより草原が維持されている山の山頂部では、スズサイコ、ツクシコゴメグサ、オオナンバンギセル、モリアザミ、ハバヤマボクチなどの草原生の種が見られ、広島県の絶滅危惧種として指定されている種が含まれていた。一方、植林や低木林となった山頂部では、カワラナデシコ、ニオイタチツボスミレ、リンドウ、ヤマラッキョウなどの草原生の種が欠如していた。山頂部に遺存する草原の種組成は、管理の有無により異なり、遷移の進行に伴い一部の草原生の種が欠如していることが示唆された。


日本生態学会