| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-200 (Poster presentation)

湿原域における放棄牧草地の植生回復をめざしたシードバンクの解明

*柴田昌俊,森本淳子,村野道子(北大・農学院)

北海道東部では、過疎化と高齢化により湿地を転換した牧草地が休耕・放棄されつつある。これらの放棄牧草地では在来木本種の欠落や牧草種の残存が確認されている。湿地植生は土壌中で活性を保つシードバンクを形成しやすいが、放棄年数の経過による影響は不明である。そこで本研究では、放棄年数の異なる放棄牧草地で採取した土壌シードバンクの種構成を明らかにすることで、シードバンクが持つ植生回復のポテンシャルを明らかにすることを目的とした。北海道東部の標津川下流において、営農中及び耕作停止後6年、13年、15年、26年が経過した牧草地で2m×2mの方形区を設置し、それぞれ5サンプルを採取した。各サンプルは地表面から5㎝×5㎝、深さ10㎝の土壌とし、地表面から0~5㎝、5~10㎝で上部と下部に分割した。湿潤条件と湛水条件を作り、発芽した種を記録した。実験の結果、湿潤条件でより多くの個体が発芽した。営農中牧草地のシードバンクからは路傍性の種が、放棄牧草地では湿生種が出現した。牧草種は出現しなかった。放棄年数が経過するにつれて個体数、種数は減少し、上部の方が下部より種数、個体数ともに多かったが、26年経過した牧草地からのみ出現した種、下部にのみ出現した種も存在した。地上植生には存在しない種も出現した。しかし、対照とした残存湿地の地上植生に存在する一部の種は出現しなかった。

以上の結果から、湿原域における放棄牧草地の土壌シードバンクは、湿生植物種の種子の保持、放棄年数の経過による有効種子数の減少という特徴を有すると考えられる。しかし目標とする湿生植物の一部はシードバンク中に存在しないことも明らかになった。


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