| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-013 (Poster presentation)

腹足類殻形態の定量化と機能評価

*野下 浩司 (九州大・システム生命)

腹足類の殻形態は規則性と多様性をあわせもつ.殻口辺縁部で外套膜により少しずつ殻体を形成する付加成長を行い,多くの腹足類ではらせん状に巻く殻をもつ.“異常巻”と呼ばれる非らせん形の殻をもつ種であっても,固有の形を有する場合や,一定の成長規則を示唆するものが多い.一方で,海,陸水,陸上と様々な環境に生息し,被食-捕食関係も多様で,それは多様な“巻き”パタン,殻口形状,殻装飾や色彩へと反映されていると考えられてきた.では,そうした形態やその生態学的機能の多様性は如何にして測られるべきなのだろうか?

腹足類の殻の巻きパタンは成長管モデル(Okamoto, 1988)によって完全に記述できる.私はこれまで螺管中心の軌道をB-スプライン曲線により近似する方法とRaupモデル(Raup, 1962; Raup and Michelson, 1965)を介した推定方法を提案し,形態の定量化の便宜を図った.今回は成長管モデルパラメータが一定の場合に,3DのCTデータから成長管モデルパラメータを推定する方法を開発した.CTデータからは「螺管の太さ」と「成長軌道上の点の3D座標データ」の計測値が得られる.これを前提に,成長管モデルパラメータの推定を行う.推定の精度を見積もるため,成長管モデルから仮想測定データを生成し,推定を行った.結果, Eの推定に関しては,成長軌道の座標に関する誤差が大きいほど過小評価される傾向があることがわかった.

一方で,腹足類殻の生態学的機能についても,幾つかの定量的な評価が試みられてきた.(例えば,殻の形成効率(Graus, 1974; Stone, 1999),殻のパランス(Okajima and Chiba, 2009, Noshita et al. 2010)).本研究では,殻の捕食に対する防御形質としての側面を定量化する方法を提案したい.


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