| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-050 (Poster presentation)

ブルガリア中央部におけるテン類 (Martes spp.) の夏期の食性

*久野真純 (東京農工大院・農), Evgeny G. Raichev, Stanislava Peeva, Dian Georgiev (Trakia Univ.・農), 角田裕志 (岐阜大・野生動物セ), 増田隆一 (北大院・理), 金子弥生 (農工大・農)

中型食肉目動物のなかには都市環境に適応した種が多く存在する。その要因の1つとして、人為由来の食物も利用できるという特性があげられる。イタチ科では、ルクセンブルクやブダペストにおけるイシテン(Martes foina)の都市域利用が知られるが、人間居住地域における本種の生態はあまり知られていない。そこで本研究では、イシテンの食物選択上の都市環境への適応メカニズムについて考察するため、都市域および山岳地域における本種の夏期の食性を比較した。2013年5月から7月にかけて、ブルガリア中央部に位置するスタラザゴラ市近郊(都市域)およびバルカン山脈(山岳地域)において、合計310個のイシテンの糞を採集し、内容物の分析を行った。また、齧歯目、昆虫類、果実の平均乾燥重量比を応答変数、月および地域を説明変数として一般化線形モデルによる解析を行った。果実は両地域において主要な餌項目であったが、山岳地域より都市域において有意に多く、かつ高頻度に利用されていた。一方、昆虫類および齧歯目の利用量は都市域より山岳地域において有意に多かった。各餌項目の利用頻度および利用量は月ごとに変化したものの、一般化線形モデルによる解析から、月間よりも地域間で餌項目の利用傾向が異なる可能性が示唆された。なお、両地域ともに生ゴミおよび家禽家畜の利用はほとんど確認されなかった。都市域で利用された果実のほとんどが街路樹・庭木・果樹園由来であったことから、少なくとも夏期の間は人為由来の果実がイシテンの都市への適応を可能にする重要な餌資源であると考えられる。


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