| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-089 (Poster presentation)

マイクロサテライトマーカーを用いたアカネズミとヒメネズミの遺伝空間パターンの解明

*大石圭太(鹿大院・連農),河邊弘太郎(鹿大・自セ),田浦悟(鹿大・自セ),畑邦彦(鹿大・農),曽根晃一(鹿大・農)

日本の森林に広く分布するアカネズミ属は、秋から冬にかけて、重要な餌資源としてブナ科堅果を利用し、餌の選択・運搬・埋蔵からなる貯食活動を通して、ブナ科樹木の分布拡大・天然更新に貢献する。近年、森林・林業基本計画により、育成単層林から天然更新による針広混交の育成複層林への誘導が推進されている。そのため、この誘導に対するアカネズミ属の貢献が期待される。堅果分散や貯食後の回収率に著しい影響を及ぼす個体間の行動圏の空間配置は、親子関係などの血縁度が重要な決定要因であると考えられる。

これまでの研究で、アカネズミとヒメネズミのミトコンドリアDNAのD-loop領域を用いて、成体になってから調査地内に侵入した個体(移入個体)の雄と雌、調査地内で出生した個体の各種3つのグループでそれぞれ塩基多様度(πn)を算出した。その結果、移動性が最も高いはずのアカネズミの移入個体の雄の値が著しく小さく、限られた血縁集団によって、他の雄が追い出されている可能性が示唆された。しかし、より信頼性の高い考察をするためには、より詳細な解析が必要である。また、貯食堅果の回収率や個体間の行動圏の空間配置は、子が親から独立した後、親子の行動圏がどのような空間配置をとるのかに大きく影響を受ける。そこで今回、2011年4月~2013年6月にサンプリングしたアカ172個体、ヒメ105個体について、マイクロサテライトマーカー(アカ:Azuma et al. (2013)、ヒメ:Ohnishi et al. (1998))を用いて解析し、遺伝空間パターンを明らかにする。


日本生態学会