| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-103 (Poster presentation)

モウコガゼルの長距離移動パターンと環境条件の関係

*今井駿輔(鳥取大・院・農),伊藤健彦(鳥取大・乾燥地セ),衣笠利彦(鳥取大・農),恒川篤史(鳥取大・乾燥地セ),篠田雅人(鳥取大・乾燥地セ),B. Lhagvasuren(モンゴル科学アカデミー)

長距離移動を行うウシ科の草食動物モウコガゼルは、モンゴルを中心に森林ステップから砂漠までの植生帯に分布する。したがって、モウコガゼルの移動距離や定住期間は環境条件に対応して種内で異なる可能性がある。そこでモウコガゼルの移動距離および定住期間と利用地域や植生条件の関係を明らかにすることを目的とした。2002~2012年の間に1年間以上衛星追跡できた20個体について、1年間の移動型を移動モデルにより分類した。季節移動距離および定住期間は選択された移動モデルのパラメータから算出される。季節移動型または混合季節移動型に分類された37例(夏始点22冬始点15例)を解析対象とし、移動距離および定住期間を目的変数、年間行動圏内および夏季・冬季行動圏内の植生指数(NDVI)要素と位置を説明変数として重回帰分析をおこなった。春、秋の移動距離はともに夏の利用場所との有意な関係は認められなかったが、冬の利用場所の位置との有意な関係が認められ、冬に北西部利用した個体で移動距離が長かった。また、春、秋とも、年間行動圏内の植物量の空間的不均一性の影響が最も大きく、空間的不均一性が大きいと移動距離が長かった。夏の定住期間は位置や植生条件との有意な関係は認められなかったが、冬の定住期間は冬季行動圏の緯度と、冬季行動圏内の植物量の空間的不均一性と正の相関が認められた。以上から、夏と冬では利用場所の選択要因が異なり、モウコガゼルの移動パターンには地理的な位置や植物量そのものよりも植物量の空間的な不均一性の影響が大きいことが示唆された。


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