| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-179 (Poster presentation)

炭素・窒素安定同位体比からみた宮城県伊豆沼のブルーギルの食性

*上坂宗憲(東北大・院・生命),鹿野秀一(東北大・東北アジア研),嶋田哲郎,藤本泰文(伊豆沼財団)

伊豆沼は宮城県北に位置する県内最大の湖で、水深は2mに満たない浅い富栄養湖である。伊豆沼では2009年から雑食性の特定外来生物のブルーギル(Lepomis Macrochirus)の移入が確認されている。かつて同様の特定外来生物であるオオクチバスが伊豆沼の生態系に大きな影響を与えたが、伊豆沼でのブルーギルの影響はまだ調べられていない。今回、私たちは炭素・窒素安定同位体比の測定と胃内容物の観察を通して伊豆沼のブルーギルの食性を調べることで、ブルーギルが伊豆沼でどのような食性をしているかを推定した。

ブルーギル含む魚類のサンプルは電気ショッカーボートや定置網を使って採取した。また、冬期を除く2012年5月から2013年12月の毎月、動物プランクトンやユスリカなど、餌の候補となる生物の採取を行った。ブルーギルは胃内容物を実体顕微鏡下で観察し、その組成を調べた。魚類は背側部の筋肉を安定同位体比測定用のサンプルとした。

伊豆沼では動物プランクトンの炭素安定同位体比の値が夏期から低下し、12月まで低い値を維持した。ブルーギルは体長の小さい個体ほど冬期に低い同位体比の値を示した。胃内容物の観察結果から体長の小さいころは動物プランクトンを主な餌とし、体長が大きくなるにつれて植物に付着しているユスリカや藻類、昆虫などの幅広い餌を利用するようになっていると考えられる。ブルーギル個体群全体で見ると利用している餌の幅は広く、窒素安定同位体比の値が低いものはタモロコやモツゴとよく似た値を示していた。他魚種に対してオオクチバスのような直接の捕食圧はないものの餌をめぐる競争で大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。


日本生態学会