| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-182 (Poster presentation)

粗朶を利用した魚の隠れ家の機能検証

*佐藤高(長岡技科大 生物), 前雄介(新潟内水試),山本麻希(長岡技科大 生物)

近年、カワウ(Phalacrocorax carbo)による内水面漁業被害が深刻な社会問題となっている。カワウは、河川の魚類より遊泳速度が速いため、隠れ場所のない河川環境下では、高い捕食圧がかかっている可能性がある。北陸地方には古くから間伐材を束ねた粗朶という素材を利用して緩流域の護岸や床固めを行う土木技術がある。そこで、本研究では、河川おけるカワウからの魚の隠れ場所を創出することを目的とし、粗朶沈床と木工沈床の構造を利用した魚の隠れ家を設置し、魚類による利用状況、隠れ家とその周辺の物理環境、および隠れ家に付着する餌料生物のバイオマス量についての調査を行った。

2012年12月に新潟県魚沼市を流れる魚野川の新柳生橋付近(37°13'32''N,138°57'30''E)の河川右岸沿いに魚の隠れ家(10.5×2.3×0.9 m)3基を設置した。最上流側に設置した1基は、2013年7月までの調査で、既に流失していた。残った2基について2013の年7月から12月にかけて、物理環境調査(土砂の堆積調査、流速調査)、魚類利用の調査(潜水目視調査、CCDカメラによる定点観測)、餌料生物調査(底生生物調査、強熱減量法を用いた付着藻類調査)を行った。いずれの調査でも2基の隠れ家の間を対照区とした。堆積調査の結果、1年以内に隠れ家の岸側や魚の隠れる中空スペースは、土砂で埋没していた。しかし、潜水目視調査から、隠れ家付近ではウグイ(Tribolodon hakonensis)などが多く確認され、アユ(Plecoglossus altivelis)のはみ痕も多数確認された。CCDカメラを用いた定点観測では、カメラの1 m前方に設置したポールの前を通過した魚の数が、隠れ家の方が対照区と比べて多いかったことから、隠れ家は魚に取って定位しやすい環境を与えていると考えられた。


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