| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-184 (Poster presentation)

一般道における中型哺乳類のロードキルの空間解析

*立脇隆文(横国大・環境情報), 高槻成紀(麻布大・獣医), 小池文人(横国大・環境情報)

生物の分布や量、ハビタット選好、移動を把握することは保全管理の基礎である。近年、様々な目的で生物の空間情報が蓄積されているが、調査努力量が偏在するため、データの分布が生物の分布や量を直接反映しない場合も多い。ロードキル情報はこのような情報のひとつであり、動物が好適なハビタットから道路上に移動し、車と衝突することで生じるため、動物の分布や量を直接反映しない。しかし、ロードキル情報は、道路管理者、清掃担当者、市民によって日常的に大量に集められており、動物の量や空間分布のモニタリングに役立てることができれば価値あるデータとなる。そこで、ロードキルの発生リスクが、ハビタットの質、移動量、交通量の3要因からなると仮定し、ハビタットの質と移動可能性を逆推定するプロセスベースの統計モデルを作成した。

調査地は山林、里山、住宅地など多様な環境が接する神奈川県相模原市と東京都町田市であり、調査対象にタヌキを用いた。2007年から2010年の3年間に2市の清掃局から得た回収住所情報のうち、番地レベルで座標が特定できた310頭を解析に用いた。解析はメッシュ単位で行い、環境変数として土地利用と幅員別道路長を用いた。移動をメッシュ間距離に基づく平滑化フィルタであらわすことで、ハビタットの質とロードキル情報を結びつけた。環境変数や移動を加味する必要性を検討するために、AICを基準にモデル選択を行った。

モデル選択の結果、1)移動を考慮した方が、移動を考慮しないモデルよりもロードキルリスクの予測が良いこと、2)タヌキは森林域と都市域の中間的な環境に多いことが示された。ハビタットの質、移動可能性、ロードキルリスクといったプロセスごとの地図を作ることで、本モデルは保全管理への利用が可能である。


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