| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-189 (Poster presentation)

都市と周辺地域の緑地における生物間の相互関係

*宮原里沙,小池文人(横国大院・環境情報)

都市の緑地では生物主体間に様々な相互作用が存在する。また緑地面積、緑地タイプ(公園・神社・寺院など)、気候等の環境要因も緑地内の主体に影響する。これまでは影響・相互作用を個別に取り上げ、有意なものが報告されてきたため、どの関係がどの程度重要かという比較は存在しない。本研究では、公園・寺院・神社を対象に、複数の環境要因と主体の関係、主体間の関係を定量的に明らかにし緑地における相互作用の全体像を把握することを目的とした。

調査は宇都宮から伊豆急下田までの鉄道沿いに統計的に21駅を選び、各駅から2.5km圏内の神社・寺院・公園各2つを調査対象とした。調査では緑地の周辺土地利用、最寒月最低気温、面積、タイプ、餌やりの有無と対象を記録した。主体は、木本植物、人、イヌ・ネコ、野生鳥類を対象とし、種の在・不在や個体数等の収集を行った。その後、主体ごとに、主成分分析や機能分類を行い、観察結果の集約を行った。

解析では全環境要因を説明変数、各主体変数を目的変数として線形重回帰を行った。関係の正負は、ベストモデルにおける各説明変数の係数を、大きさは各変数によって説明できる分散比率を用いて判断した。主体は環境要因の影響を取り除くためベストモデルを用いて残差を求め、その残差による線形重回帰を全主体間で行った。関係の正負、大きさは環境要因の際と同様の手法で判断した。

環境要因と各主体の関係で最大だったのは、緑地タイプと木本種組成であった。緑地内の各主体と関係があるのは、人による設計方針・餌やりであり、気候・都市化傾度による主体の変化は少なかった。

各主体間の関係では、鳥類と木本種の関係が強かった。可食果実生産種の存在は鳥類の増加に寄与し、鳥類の増加は実生種数の増加に影響していた。一方、緑地内人数の増加は実生種数の減少に関連していた。


日本生態学会