| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-214 (Poster presentation)

北海道標津町における人とヒグマ(Ursus arctos<i/>)の遭遇ハザードマップの作成

*松橋杏子(酪農学園大院・野生動物),藤本靖,赤石正男(NPO法人南知床・ヒグマ情報センター),長田雅裕(標津町農林水産課),吉田剛司(酪農学園大院・野生動物)

ヒグマによる農業被害や出没は地域に経済的・精神的被害を与えている.道内において正確な位置情報を伴った出没情報を収集し,独自で対応を実施している市町村は標津町のみである.しかし住民からの通報を基にしている為「不在データ」が明確ではなく「偽りの不在データ」が多く存在する.そこで本研究は「不在データ」を必要としない分布予測モデルMaxentを応用し標津町における人とヒグマの遭遇ハザードマップの作成を目的とした.

解析単位を250mグリットとし解析範囲は市街地(定住住民の不在地域を除く)および道幅5.5m以上の道路からそれぞれ500mバッファを発生させ,そのバッファを含む4149グリットとした.「在データ」は2010年~2013年のヒグマ出没175地点を148グリットに変換した. 説明変数はそれぞれグリット内の広葉樹面積(B1),広葉樹パッチ数(B2),植林地面積(P1),植林地パッチ数(P2),河畔林面積(RSF1),河畔林パッチ数(RSF2),市街地面積(U),牧草地面積(C),河川総長(Ri),国道総長(Ro)とし,Maxentモデルを構築した.

RSF2,P2,Ro,Riの組み合わせで最もモデルの評価が高く(AUC=0.697),特に寄与率の高い変数はRo(58.9%),RSF2(34.9%)であった.また,ヒグマ遭遇危険度を5段階で評価したハザードマップを作成した.

本研究で標津町における住民とヒグマの遭遇危険度を上げる要因は国道の総長と河畔林のパッチ数であることが判明した.全てのモデルでAUCは低く,遭遇危険度はほぼ中程度であったが住民とヒグマの遭遇危険度を可視化できた.町内の住民とヒグマの軋轢の軽減に役立てることが期待される.


日本生態学会