| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-001 (Poster presentation)

比較解剖学的アプローチで探るAnolis bartschi の性的二型

*安西航(東大・理),大村文乃(東大・農),Cádiz Díaz A.(Univ. Habana,東北大・生命),L. M. Echenique-Díaz(山形大),河田雅圭(東北大・生命),遠藤秀紀(東大・博)

カリブ海の島々を中心に適応放散しているアノールトカゲ属(Anolis)は、地表から樹上まで多様な環境に生息し、それぞれの環境に適応して外部形態の多様化がみられる。またアノールトカゲ属のほとんどの種で、頭を持ち上げて喉袋を膨らませるディスプレイがオス特有にみられる。演者らのこれまでの研究から、四肢の筋骨格形態には生息環境および行動様式に関連すると考えられる種間差があること、またディスプレイに関連すると考えられる雌雄差があることがわかった。そこで、そのコントロールとしてキューバ西部の洞窟や岩場にのみ生息する、Anolis bartschi に着目した。この種は洞窟に適応した特殊化が見られ、オスでも大きな喉袋をもたず、ディスプレイを行わないといった特徴がある。本研究では、この種では筋形態における性的二型が極めて小さいという仮説をたて、四肢の筋骨格形態の力学的な評価によりそれを検証した。

Anolis bartschi において前肢の筋骨格形態を比較した結果、ディスプレイを行う他の2種で見られたような、頭を持ち上げた姿勢の維持に用いられる筋での性的二型は確認されなかった。この結果から、アノールトカゲにおける前肢形態の性的二型が社会行動であるディスプレイと関わっていることが強く示唆された。しかしながら、肘関節の屈筋がメスよりもオスで発達していることがわかった。これは他の種ではみられなかった傾向であり、洞窟という特殊な環境に適応したAnolis bartschi の生態に関係していると考えられる。本発表では、未だ不明瞭な点の多い本種の生態について、比較解剖学的な観点から考察を紹介する。


日本生態学会