| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-020 (Poster presentation)

佐渡島に生息するハンミョウ3種の遺伝的構造の違い:生息環境との関係

*大脇淳(新潟大・朱鷺自然セ),長太伸章(東北大院・生命),山田宜永(新潟大・農),田中洋行(京都大・霊長研)

昆虫の様々な生態的特性はその生息環境に大きく影響されている。例えば、一般に生物の移動能力は、森林のような安定的な環境に生息する種に比べ、撹乱の多い不安定な環境に生息する種の方が高いと考えられている。このような移動能力の違いは、個体群内および個体群間の遺伝的構造にも影響を及ぼすと思われ、島嶼の孤立個体群と供給源となる個体群の間の遺伝的分化は、撹乱地に生息する種では小さいが、安定的な環境に生息する種では大きいと予想される。そこで、生息環境の異なる3種のハンミョウ、撹乱の多い環境(河口部や耕作地等)に出現するコハンミョウ、森林と接する草地に多いニワハンミョウ、安定的な森林に生息し、飛翔能力を失ったマガタマハンミョウの3種を佐渡島および対岸の新潟県西部と東部で採集し、ミトコンドリアのCOI遺伝子と16S rRNAの塩基配列から遺伝的構造を解析した。

その結果、遺伝的構造は3種間で大きく異なることが明らかになった。コハンミョウでは、特定の1ハプロタイプが佐渡島、新潟県東部、新潟県西部の全てで優占しており、集団間で遺伝的な分化は見られなかった。ニワハンミョウとマガタマハンミョウは集団間で遺伝的に分化していたが、ニワハンミョウでは佐渡島で優占するハプロタイプが新潟本土の2集団でも認められた一方、マガタマハンミョウは集団ごとに独自のハプロタイプを持っており、集団間で共有するハプロタイプは一つもなかった。また、マガタマハンミョウは佐渡島の北部(大佐渡)と南部(小佐渡)で遺伝的に大きく異なり、現在も交流がないことが示された。これらの結果は、生物の生息環境は、移動能力を通じて集団間の遺伝的構造に影響していることを示唆している。


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